* * *
結局世界は、完全には崩壊しなかった。
未だ奏流は目を覚まさないからだ。
今、彼はひとり、世界の瓦礫の中に立っている。
取り残されて、立っている。
必ず迎えに来てくれる、と信じてはいたけれど、どうしても寂しさを抑えられなかった。
やがて彼が立っているのに飽きて瓦礫の中に座り込んだとき、何かがふわりと彼の背後に降り立った。
「――初めまして」
人の声とは少しだけ響きが違うそれは、彼と等質のなにか。
「……」
無言で、しかし一抹の期待を込めて振り返る彼の眼前に、桃色の光を纏った美少女が浮いている。
「自己紹介するわ。わたしは桜都……〈オート=ハート〉」
「……奏流」
少女は嬉しそうににっこりと微笑み、つられて奏流の表情も少し明るくなった。
「……ああ、初めてよ。わたしと同じもの……おなじ存在」
少女――桜都は、奏流に手を差し伸べる。
「きっといい友達になれるわ。いいえ、
姉弟なのかしら?どっちでもいいわ、わたしたちきっとなかよくなれるわね」
うきうきと言う彼女のテンポに少しずつ巻き込まれながら、奏流はふわり、と笑った。
――斯くして、機械の少年と機械の少女は出会った。
それが新たな物語の始まりになるのかどうか――それはまだ、誰も知らない。
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