……。
 サングラスを掛けたように景色が暗い――そう思ったら、本当に目の前に黒っぽいプラスチック板があるのに気づいた。英晴はその板を押し上げ――ヘルメットのようなものにくっついているようだ――、枕元の高そうな時計を見た。
 三時三十七分。
(……寝過ごした?)
 間違っても夜中ではない。それにしては明るすぎる。
 気が付くと身体の色々なところにコードが貼り付けられ、よく見れば心電図など取っている模様でもある。
「……??」
 状況がさっぱりわからない。
 一体何が起こったのか?
(……えーと、連休で。友典の家に来てて)
 メンバーは友典、英晴、一粋、秋、由乃、そして藤四郎の六人――藤四郎?いや藤四郎は何かの理由で姿を消して、厄介な相手として再び現れたのだ。その代わりに少年――そうだ、奏流が。
(とりあえず皆に謝りに行かなきゃな)
 きっと皆、もう起きているだろう。
 一人寝過ごしたことを詫びなければ。
 ――しかし彼はすぐに、皆が彼と同じような状況であることにひどく驚かされることとなる。
 だがしかし、藤四郎がいたはずの部屋にだけは、空っぽの、ぺしゃんこのスポーツバッグの他には何もありはしなかった。

 同刻――結城コーポレーション、[STEB‐SOUL]の大部分がある部屋の隣の操作室コントロール・ルームに、白装束の来はいた。
 手にするは白い一枚の紙――黒のボールペンで詳細に書き込まれた設計図。
「……これがおまえの望みだろ?由乃。どうやら間に合ったみたいだ」
 その設計図は微弱な霊気を帯びて、その才のあるものにしか見えない光をそっと放っていた。
 だがそのときがちゃりとドアノブの回る音を聞いて、来は姿を隠す。
「……後味の悪い結末は見たくない――それに、ずいぶん楽しませてくれたからね」
 結城秀一が入ってきて、その設計図を目にする。おや、と首をかしげて来のほうを見た。にやりと笑う。
「……妹思いのいい兄上だねえ」
 まるで僕のようだ、と嘯いて背中を見せる。来は思わず「一緒にするなよ、全く逆だろう」と突っ込みたくなったが、何となく秀一がそれを待っているような気がして、やめた。

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