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(あと――三分)
 じりじりと緊張感が募る。息苦しささえ感じ始める。もっとも自分は、ずっと前から息などしていないのだけれども。
「最後に、なるんですね……」
 自分が、彼らに会うのも。
 奏流と接するのも。
 最悪――自分が、意識を保っていられる最後の時間になるのかもしれない。
 今でも時々意識が飛ぶし、以前よりも身体に力が入らない。いや、身体などという実体さえとうにないのであるが、それでもやはり脱力感を覚える。それ自体も貴重な発見ではあるが、無論嬉しくなどない。
(せめて――せめて、この件に片がつくまで)
 今でも、より精巧な人工頭脳を作りたいという夢は持ちつづけている。だがしかし、それはもはやどうでもよくなりつつあった。
 かといって、必死になってでもやりたいことは、悪いとは思うが彼の友人たちを救うことではないような気がしているのだった。
 何かが。
 何かひとつ心に引っかかっていることがある。
 それさえ叶えば、
 それさえ、

 ……後、二分。

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      *      *      *

 午後一時五十八分。
「ごめん、遅くなった!」
 おなじみ安全鍵で鍵を開けてばたばたと室内に入ってきた弟に『静かに』と『座れ』と手で示して、秀一は電話を切った。早口に問う。
「遅くなったじゃないだろう、一日経ってるよ」
「ごめん。いつも通り夕飯食べたらつい普通に行動しちゃって」
 こいつは本当に変わったな、と秀一は思う。かなり淡白な弟だったと思うのだが、この分では仕事もまともにしているのかどうか怪しい。今のところ異変はないから、構わないと言えば構わないのだが。
「兄さんは何の電話?」
「ああ、昨日友典の家のほうの調査に行かせた社員が、今日までかけて調査してくれてね。アンテナが結城本社まで点々とつながってる、とようやく探り出してくれた」
 もちろんとっくに知ってたんでしょ、と呟いて保幸は呼吸を静めた。それを横目に見て、秀一は。
「さて――間に合ったな。最終段階ラスト・ステージ――」
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 ……そして三人の黒幕・・・・・は同時に囁くのだ。ある者は密やかに、ある者は決意を込めて、またある者は、ひどく楽しそうに。
「――開始スタート!」

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